胆石症と診断され、手術となったら胆嚢を全部取り除く手術になります。
これにはスコープを使う腹腔鏡下手術と開腹手術とに分かれます。
どちらの方法になるのかは胆石の大きさにもよります。
初めての胆嚢摘出術が行われたのは100年前のベルリンで、医師の母が胆石で苦しみ、胆嚢をとったのが最初といわれています。
胆嚢摘出術で、現在最も一般的なのがこの方法です。前進麻酔で行われ、腹部に三ヵ所程穴をあけ、そこから機材を入れて手術を行う方法で、体への負担も少なく、術後の回復の早い手術法となります。
挿入されたカメラの映像を見ながら手元で電気メスやハサミなどの操作をします。
臍に開けた穴から体内から切除された胆嚢を取り出します。
以前は他の臓器に癒着が認められる場合は、途中から開腹手術に切り替えていましたが、現在では炎症や癒着が予想されていても腹腔鏡を用いて行われています。
この方法の利点としては、傷が小さい、術後の痛みが軽い、早期退院ができるということです。
状況によっては途中で開腹術に切り替えるということは、常に念頭に入れておきましょう。
結石が大きい場合、胆嚢の炎症や周りの臓器への癒着がひどい場合には、腹腔鏡を使わずに開腹手術となります。
切開する傷は15~20センチ前後で、腹腔鏡に比べると開腹は遅くなります。
以前はこの方法が主流でしたが、現在では先に腹腔鏡を用いて、癒着がひどい場合などに、途中から開腹手術に切り替える方法をとっています。
術後は1週間~2週間で退院といわれていますが、実際は1週間~10日ほどになっています。
胆嚢の摘出術は術後も少し下痢気味になるのをのぞけば、依然と変わらない生活が送ることができます。
徐々に肝臓も適応してきて、胆嚢から出る胆汁のように濃い胆汁を分泌するようになりますので、下痢も日を追うごとに改善されていきます。
そんな中で、稀に術後に胆石の発作のような不快感や痛みを覚える人もいます。
これを胆嚢摘出後症候群と呼び、原因のほとんどが胆石の取り残し、胆石の再発だということなのです。
検査をしても原因のわからない場合もありますので、このような症状が出たら、手術を行った外科医に相談してみましょう。
入院していたときの同室の患者さん、部屋の中でただ一人の開腹手術者でした。たまに背中や胸に圧迫感を覚えるくらいで痛みはなかったそうです。
それでも頻繁に不快感があるので、とりあえず受診してみようかと思って病院を訪れたら、予想外にも胆石だったそうです。
彼女の胆石を見て驚きました。きれいな薄い緑色の鶏卵ほどの大きさの結石だったのです。胆嚢の中いっぱいに結石がゴロンと入っていたのです。
これでは結石が動きませんので、疝痛発作を経験しなくて済んだのです。
その代わりといってはなんですが、結石が大きすぎるために腹腔鏡を使うのは無理で、最初から開腹手術と決まっていました。
傷を見せてもらいましたが、脇の下から胸に向かって2センチほどの大きな切開のあとがありました。
腹腔鏡では臍の傷が一番痛かったのですが、一ヵ所しか切らなくても傷が大きいので、我々腹腔鏡で行った者達よりも動くときには痛そうにしていました。自分より先に入院していて、そのときすでに手術を終えていましたが、あとから入院して手術をした自分の方が先に退院してきました。
入院して手術の数日前になると、痰が絡まないように1日3回の吸入器の使用を義務づけられていました。もちろん喫煙もいけません。
自分は喫煙者で、どうしても我慢が出来ず、吸入をかけながらも隠れて吸っていました。
昼間は他の患者さんや見舞客に紛れて、4階の病室から1階の喫煙所まで行けたのですが、問題は夜です。
ナースステーションを通らなければエレベーターまで行くことができません。
忍者のように看護師さんが背中を向けた隙に小走りで通ったりしていました。
そして手術後当日の夜、麻酔から完全に覚め、考えることは「吸いたいな~……」でした。
そんな時には悪い仲間ができるものです。
50代で、抗がん剤治療のために入院していたおばちゃんと仲良くなっていたのですが、わざわざ車椅子を用意して夜中に自分を誘いにきました。
ナースステーションの隙を伺って、車椅子を押してもらって廊下を疾走する患者2名。目指すは喫煙所です。「がん患者に車椅子押させるのはあんたくらいだからね!」
「わざわざ車椅子用意して誘いにきたのは誰よ!」爆笑しながら夜中の廊下を走りました。親子ほど年齢の違う二人の会話です。
満足して病室に戻ろうと思ったら、鬼のような顔をした看護師さんが仁王立ちになって待ち構えていました。
「今日手術したばかりの人が何やってるの!!!」思いっきりお叱りを受けました。