皆さんの周りで、胆嚢の摘出術を受けた人はいますか?
自分は腹腔鏡手術という、内視鏡での胆嚢摘出術を受けましたが、同じ病室で、様々な症例や色々な大きさの結石を見てきました。その体験談を皆さんに告白していきます。
全ての検査を終えていよいよ胆嚢摘出術のために入院です。前日は絶食で下剤を飲んでお腹の中を空っぽにします。
同室の人たちも皆胆石で入院していました。自分の主治医は運よく某医大病院から2週間だけきていた、腹腔鏡手術のベテランの医師でしたので全てお任せして安心して望もうと思いました。
夜、手術の説明が先生からありました。そこで衝撃の事実が発覚したのです。なんと……胆石ばかりではなく腎臓結石もあるのだと。話している医師は外科医です。それまでは消化器科で様々な検査をしてきました。腎結石といえば泌尿器科です。泌尿器科の診察は受けていません。
X線写真を見た外科医からの告白に腰を抜かさんばかりに驚いたのです。そんなショックとは裏腹に、医師はどんどん話しを勧めていきます。肝臓に胆嚢が癒着している可能性があること。その場合は輸血が必要になること。腹腔鏡で進めていくけれども、中を見て不可能であれば途中で開腹手術に切り替わる可能性のあることなどを告げられました。
その後、病室に麻酔科の医師がやってきて、手術室に入る前に病室で前麻酔の注射をすると説明を受けました。
夜はもちろん眠れません。寝不足のまま明日の手術に望むことになりました。
寝不足のまま迎えた朝、慌ただしく看護師さん達が自分の周りを採血したり血圧を測ったりと走り回っています。
臍の掃除は綺麗だから必要ないねと言われました。ベッドの上で裸になり、褌のようなT字帯をつけます。
術着に着替え、前麻酔の注射が打たれます。
同室の患者さん達にエールを送られながらベッドごと手術室に向かいます。寝不足のせいなのか注射のせいなのか、すでにこの辺で意識が朦朧としています。手術室に入るまでは断片的にしか記憶がありません。手術室では自分で手術台に上がるよう言われ、フラフラになりながらようやく横になります。
次ぎに記憶があるのは手術台の上で大暴れして、スタッフに押さえられている自分。「先生がいない! 先生どこ! ○○先生がいないなら手術しない!」裸で暴れていました。麻酔下では潜在意識にあることを口走ってしまうそうですが、自分は前麻酔の時点でかなり麻酔が効いていたようです。
次ぎに記憶にあるのが、背中を丸めて腰椎麻酔をしているときです。「こっちは感覚で針を刺しています。
神経に触ったらかなり痛いのでそのときは言ってください。針を手前に戻しますから。」そう前日の説明で麻酔科の医師から言われていました。腰椎麻酔、神経に触って激痛です。痛いので体が動きます。痛い痛いと言う自分に、麻酔科の医師は「危ないから動かないで!」と怒るばかりです。
背中を丸めた私は「皆嘘つきだ。痛かったら針引くって言ってたくせに。なんでそんな嘘つくの?」と一人でブツブツ言っていたのを覚えています。どうしてこんな恥ずかしいことばかりが記憶にあるのでしょうか。次ぎに気がついたときには視界に無影灯がありました。
胸の部分に何か冷たいものをつけられて、感覚があるかどうか聞かれました。「ん?ちょっとわからない!今の所もう一回!」どこまでも大いばりの自分です。その途中で記憶がとぎれました。手術予定時間は2時間半です。それ以上かかるようなら途中で開腹に切り替わったと思ってくださいと告げられていた親族。待合室で心配して待っていたそうです。
次ぎに気づいたのは病室用のベッドに寝かされ、エレベーターを待っている時でした。両頬を思いっきりひっぱたかれて起こされました。
「○○さ~ん!終わったよ~!起きて~!」両頬にビンタをくらいながら「起きてるって。目が開かないだけだって。」
そんなことを考えていました。気がつくと病室で寝ていました。
手術の時間は5時間半かかったらしいです。尿管をつけられ、背中には点滴に入った痛み止めを注入するための針が刺さっていました。心配して見舞いにきた友人に、「見る見る?傷口!今切ったばっかなんだよ~!」と嫌がるのを無視して前をはだけて生々しい傷を披露したそうです。
「そうです」というのは全く記憶にないのです。同室の人達に聞かされて初めて知りました。恐るべし……麻酔……です。
その日の夜遅くに尿管がはずされ、次の日から歩行が許可されました。傷が痛むため、体をかばって前屈みになってしまいます。傷口を確認すると、臍のすぐ下に3センチほどの傷と、右脇腹に一ヵ所、その15センチほど上に一ヵ所の傷がありました。
三日後には退院できる程に回復しましたが、職場復帰はさらに1ヶ月後になりました。胆嚢がないため胆汁の濃度が薄く、しばらく緩い便が続きましたが、体も徐々に慣れてきて、今ではすっかり依然と変わらぬ生活に戻っています。
自分が手術について言いたいのは、「心配しなくても寝てれば終わる」です。医師を信頼していれば寝ている間に終わってしまいます。心配なのは麻酔下で心の中にあることを口走ってしまうことでしょうか。
自分が無意識のうちにあれだけ喋っているとは知りませんでした。退院の日の朝に瓶に入った胆石を主治医から渡されました。
「はい!100%コレステロールの胆石!」その結石はとれたてホヤホヤで、きれいな緑色をしており、キラキラと光っていました。時間がたった今では茶褐色に変わってしまいましたが、結石を見るたびに「こいつがあの痛みの原因か!」と思うと憎らしくなってきます。
なにより忘れられないのが主治医の一言です。「脂肪が多いので切るのが大変でしたよ。」だったら脂肪も取ってくれればよかったのにと言うと、「よっぽどだったら脂肪も取る場合もあるんだよ。」と。
取られなかったということは、よっぽどではなかったようです。今ではすっかり元気な体になり、日々健康に過ごすことができています。